08.

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08.

「遅いっ!」  ミフユが練習に加わってから、チームの雰囲気は少し変わった。しかし、六人の部員でできることは限られている。三対三が限界であり、しかも初心者が二人いる状態では、まともな練習すらままならない。しかしミフユの驚異的なスピードでの成長に少しだけ希望を感じていた。彼女がカギを握っていることは明らかだった。 「もっと詰めて、腰を落として!  休まないで、もう一回!」  自然と熱が入る。ミフユはバドミントン経験者で瞬発力はあるものの、体力にはまだ不安が残る。競技の違いに苦しむのはよくあることだが、そんな悠長なことを言っていられる時間はない。ボールがラインの外に出て流れが止まった。 「ディフェンス側のブロック! 今の真っ直ぐ上に飛ぶ! オフェンス側は今のなら全然打てたでしょ! 勝負する! ミフユ! ミフユはもっと周りを見て、スイッチできそうなら迷わず行く、中途半端が一番良くないよ! はい、次! ……あ」  気づけば、他の部員たちの視線が冷たく感じられた。やってしまったと、思わず声が漏れる。私には自分に厳しくするのと同じように、周りにも厳しく当たってしまうところがあった。普段は気をつけているつもりだが、バスケとなるとつい感情が溢れ出てしまう。  チームメイトたちは無言で目を合わせる。彼女らの気持ちが痛いほど伝わってくる。『あんたがいると楽しくない』と、まるで昔みたいに言われているように感じた。奥歯が痛い……。また、同じ過ちをおかしてしまうのか。 「ごめん、ごめん、少し休憩にしようか」  それが嫌で、私は逃げるように体育館を飛び出した。
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