07.

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07.

 高校に入ってからも、私はバスケ部に入った。バスケが好きだから。弱小チームだったけど楽しかった。シュートは打てなかったけど、その分ドリブルやパスで貢献することに徹し、その役割を全うしてきた。  だが、最後の大会を目前に控え、チームメイトの一人がケガで出場できなくなった。控えもいない少人数。でも私はなんとしても試合に出たかった。今まで頑張ってきたチームのためにも、ケガで出られなくなった人のためにも。人数を揃えようと、私は必死にチラシを配っていた。 「お願いします! バスケ興味ありませんか?」  何度も大声で呼びかけたが、誰も足を止めない。私だって、逆の立場ならチラシを受け取らない。時期外れの部員募集なんて、バカバカしいと思うに違いない。しかし、私は諦めなかった。そうしているうちに、ついに一人の女子生徒がチラシを受け取ってくれた。 「ありがとうございます!」  少し俯きがちなその子に、私はお礼を言った。たった一人の生徒がチラシを受け取ってくれただけで、私の心は少し軽くなった。 「ありがとう……ございます」  その子は、少し照れたように言い、深く頭を下げて去っていった。小柄で少し丸みを帯びた姿に、私は微笑んだ。  たった一人。されど一人。今日の成果を胸に、私は片付けを始めた。まだ入部してくれるかはわからないが、誰かが興味を持ってくれたという事実だけで俄然やる気が出た。荷物をまとめて帰ろうとしたとき、「あの!」と声がかかった。振り向くと、先ほどの子が駆け寄ってくる。 「一緒に頑張って、くれませんか?」  彼女の言葉を聞いた瞬間、私は驚きと共に、過去の記憶が蘇った。その言葉は、かつて私が口にしたものと重なっていた。 「うわ、本当ですか!? え、でもいいんですか? いや、待て、落ち着け……」  本当に嬉しかった。笑顔で応えると、彼女もまた微笑んでくれた。その笑顔を見て、私は確信した。まだ終わっていないのだと。
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