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酔月楼は抜け目なく、売上の一定量を近隣の楼で豪遊してばらまき、同業の嫉みを逸らすことも忘れなかった。その遊蕩役は主に、外面のいい幇主が買ってでていた。
すっかり金霞を我が庭としたある日のこと。
幇主は、甲骨を削り続ける、酔月楼に集いし爛石の仲間たちに、笑顔で告げた。
「みんな大好き!」
幇主の「大好き」は、女色と博打と贅沢だろう。とその場の誰もが思ったが、誰もが機嫌がよかったので、この唯我独尊女を優しい笑顔で受け入れた。
「お帰りなさい幇主、今夜は早いですね」
春宵もそのひとりだった。ここちよい労働の汗を拭いながら幇主に訊ねていた。先祖伝来の令亀のわざを賭博に用いることを潔癖に拒んだ貞人は、もうどこにもいなかった。
幇主は一同を見わたして告げた。
「大事なことなので皆よく聞いて。金霞において真の敵は、同業の嫉妬ではなかったわ」
「真の敵? それは誰なんですか」
「ここの元締め」
金霞は官営の妓楼街。その元締めといえば……
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