四章 爛石のおつとめ

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欄干から階下を窺えば、胸に鳥の刺繍布をつけた官服の人物が、吏員を伴い、この酔月楼へ立ち入ろうとしてもめている。 「教坊司(おやくにん)のおでましよ」 幇主が戦意むき出しの笑顔で呟いた。 危機が差し迫っているなら、笑いながら言うのはやめて欲しい。状況把握が遅くなる。古来、宦官が国を傾けてきたのは、この紛らわしい表情のせいじゃないだろうか。 酔月楼は急激に人気が高まりすぎたのだ。 一軒の妓楼を突如として爆発的に発展させれば、官衙(やくしょ)が黙っているわけがない――ということだろうか。結果論ではあるが。 逃げようにも、表からは官吏が踏み入ってくるところだ。 実はこれは、かなり危機的状況なのでは?
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