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「――行きな、」
背後からかかったのは、鴇母の声。
「裏に船が繋いである。使え。とっととしな!」
「どうして助けてくれるんですか?」
先導する鴇母に、春宵は反射的に聞いていた。
「アンタたちははじめ、この楼をぶち壊し、アタシの資産を損なった。屑だ。しかし、ぶち壊したあと、何倍にも大きく資産を膨らませてくれた」
「私も一気に年季明けがかなった。ありがとう」
妓は船の係留縄をほどきながら笑った。
戸惑っている春宵の手を、幇主が引っ張った。
「案ずることないわ。金霞の鴇母が官衙の監査に不慣れてなんて話、聞いたことないもの」
今はその言葉を信じるしかない。爛石総がかりで漕いでいる船はすぐさま岸を離れ、金霞の影はやがて遠のいていった。
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