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五章 離別
爛石に戻り、一月ばかりが過ぎた頃だ。
道具の手入れをしていた春宵は、幇主に呼び止められた。
「先生、商売道具を使えるようにしておいて、数日後に出立よ」
令亀の準備をして?
ということは……
「酔月楼は無事だったのですね!」
「先生は話が早くて好きよ。酔月楼の人気は先生の令亀だもの。先生がいなくちゃ始まらないわ」
「酔月楼は、今度はどこへ出張するんですか?」
いまや大人気妓楼の酔月楼のこと、宴席からの声がかりなど、あまたあるに違いない。
おそらく幇主は、今まで鴇母の依頼を蹴ってきた。にもかかわらず今度は春宵へ話を通し、依頼を受けようとしている――それは、出張する場所に満足がいったということではないだろうか。
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