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数日後、船に揺られてやってきた酔月楼の妓と鴇母が、爛石で合流した。
「今回の客は禮部の官人。上客だ、うまくやってくれよ」
と、鴇母は懐かしくもあくどい笑みだ。
爛石の面々と鴇母と妓は、早速打ち合わせに入った。
「この間の監査は教坊司だったんですよね? あの一件で酔月楼には被害はなかったのですか?」
春宵は疑問に思っていたことを訊ねた。
「被害? いやいや逆だよ。あの監査はつまり、お偉方が、うちの妓を見に来る口実だったのさ。自分の宴の下見のためにさ」
金霞は官営の妓楼街。それを統括するのは教坊司。その上役が禮部だ。
「そうそう、酔月楼の名声を聞き、官価で安く接待に使おうってわけ。さすが欲界の仙都の統括者って感じだよねー」
面白がるように妓がいう。酔月楼の妓は足抜けできるほど稼いだという話だったが、もう少しその人気を味わっていたいのかもしれない。
「わたしたちはもう少し打合せするから、先生は令亀の支度を入念にしておいて」
幇主にそう言われて、春宵は自室に戻った。
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