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宴の日はすぐにやってきた。
この日のために、爛石の技術者が特別巧妙に造った身分符と路引、それから原形をとどめない化粧は、京師に張り巡らされた死の網を一つ一つ確実にかいくぐった。
その上、門衛は、博打の結果を神がかり的に的中させるという噂の妓に夢中で、その荷物持ちに扮した春宵たちには無関心だった。
宴の場所は、いかにも有金家という感じの豪邸だった。劉府、という灯籠が下がっているので、品秩は三品以上。かなりの高官のようだ。
門をくぐれば、院子も房がいくつあるのかわからないほど。
春宵は控えの間に入り、早速令亀をはじめる。
隣の酒宴からは、妓が予想を〝的中〟させるたび、歓声が上がる。
作業中、春宵は急に肩をゆすられた。幇主が隣室を指さしている。何事かと意識を令亀から外へ戻すと、耳に宴席の会話が響いてきた。
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