21人が本棚に入れています
本棚に追加
「このごろ、爛石の縄張り近くに、兵の姿が増えたな……」
爛石の拠点にかえって数日後のことだ。そんな愚痴が聞こえて、甲骨板を制作していた春宵は振り返った。
すると、慌てた厨師が、厨房から必死にかぶりを振っていた。
「いやいや! 先生のせいじゃないよ!」
先日、京師の宴で仕入れた賊狩りの話を思えば、あきらかに春宵のせいだろうが、全力で気を使われた。
その場は取り繕われたが、人の声はあらゆるところから漏れ聞こえるものだ。
「取り絞まりがいつもより厳重だ、茶を売りにくい……」
「物資を買い出しにいくのも不便になった」
爛石構成員のそんな不平を耳にする機会が、日毎に増えつつあった。
春宵はややいたたまれない気分になりながらも、できることといえば、甲骨板作りくらいで、骨と向き合うほかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!