五章 離別

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幇主のいつになく鋭い視線に穿たれ、七十余名の構成員たちは下を向いて黙っていたが、やがておずおずと、その中の一人が口を開いた。 「それは存じ上げませんが幇主、私たちが楊先生を匿っているのではと、国府に目をつけられているのは確かです」 「先生が疎ましいってこと? だから先生の荷を川へ?」 その構成員が言葉を濁すと、すぐに別の構成員が、言葉を継いだ。 「幇主、このごろは兵の目が光って、茶の取引がやりにくい。先だっての、金霞での儲けを食いつぶしながら生活している現状をどう考えていらっしゃる」 「状況はよくない。でも、こういう事態は過去にもあった。その時学んだでしょう、最悪だって、いつまでも続くものじゃないと。冷静に、機を待てばいいだけ」 幇主、とまた別の者が立ち上がった。 「さきごろ、同業の《虹湖》が大規模な摘発を受けたって話です。爛石だっていつ順番が回ってくるか……」 「よそはよそ、うちはうち」 幇主は明るく返したが、場にただよう、停滞と焦燥の気配は消えない。それどころか、幇主が強引に押さえつけられたことによって、いっそう重く濃く室内に広がっていく。
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