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臥室に戻っても、幇主は眉をひそめて柱にもたれ、夜空を睨んでいる。
春宵が茶器を持って隣に座ると、幇主は吐き捨てた。
「いつからわが幇の人員は、幇主たるわたしに堂々と反抗するようになったのかしら。わたしの妻を公然と非難するなんて。見せしめが足りないのかもしれない」
幇主はありていに言うと気まぐれで苛烈な独裁者だ。逆らえばどうなるかくらい、構成員は知っている。単純に、恐怖で押さえこめないくらい、幇内の不満は肥大しているのだ。
爛石はそもそもがおたずね者だ。国から睨まれている理由は春宵の存在だけではない。だが、春宵を匿い続けることで爛石が蒙る危険は増す。
春宵と爛石は互恵の関係。春宵は令亀によって爛石に団結をもたらし、爛石はそのかわりに春宵の問題に力添えする。幇主とはそういう取り決めだ。
今、その関係は、破綻している。
春宵は爛石を停滞させ、危機にさらしている。
今夜、春宵を白眼視した構成員たちだって、春宵が闘蟋で結果を出したとき、大いに喜んでくれた、排他的で、身内に優しい、ふつうの人だ。
春宵を匿ってくれ、活躍の場を与えてくれもした。そんな彼女らを荒ませているのは、春宵に他ならない。
ならば選択肢はこれしかない、と春宵は決断した。
「幇主、私との侶伴関係を解除して下さい」
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