21人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんですって?」
「書物で読んだのですが、陽花がもう一度、契約した陰花の首の後ろを噛めば、侶伴関係は解除出来るそうですね」
幇主は手を伸ばして、乱暴に春宵を腕に収めた。
「先生はわたしの得た財物の一つなのよ。財物は賊の誇りで自信なの。誰かの機嫌を取るために、わたしはわたしの自信を手放したりはしない」
それです、と春宵は首を振った。
「侶伴になると、相手へ心が引きずられる。そのため幇主は必要以上に、私と離れがたい気分になり、愚かな判断をしているのだと思います」
「周囲に流されて愚かな判断を下しかけている先生よりはましよ。いい? 爛石はそもそも国賊なのよ。今回のことだって、呪詛騒ぎに便乗した賊狩りで、先生の存在なんて口実に過ぎない。だいたい賊狩りなんて過去にいくらでもあって――」
「もう決めたことです」
「先生は、出頭すれば処刑よ」
「事情を話せばわかってもらえるかもしれません」
「本心から言っているの?」
幇主の目は夜より深い。嘘はつけない。春宵は言い方を変えた。
「幇主は私が守ります。出頭で時を稼ぎますから、その間に、別の拠点へ逃げのびて下さい」
最初のコメントを投稿しよう!