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「――星侍郎、乱心!」
階下の官僚たちが通報したのだろう、兵が、玉座の星を捕えようと集まってくる。
包囲の輪は狭まっていく。輪が閉じた時が、星の死だ。
玉座の傍らに立っていたある宮人が、玉座の後ろの衝立に向かって小声で叫んだ。
「だめじゃんうまくいかないじゃん! 貞人さん! このままだと宮人も、菜市口で凌遅刑じゃん!」
衝立の向こう側からは、沈黙と、獣骨の焼ける匂いだけが漂ってくる。
星は陽花なのでそれなりに腕が立つ。徒手で兵をあしらいながら思った。
あの貞人、この期に及んで占卜か。冥界での吉凶でも占うつもりか。こういう商売がはびこっているから、いつまでも大衆は淫祠邪教を恐れるのだ。
この宮人たちにしてもそうだ。綿密な計画もないのに、人を巻き込み国家転覆を企てるとはいかがなものか。自分が天子になったら、こんな非文明的かつ迂闊な輩は全員国外へ放逐だ。
しかし今は、この計画性に乏しい連中と足並みを揃え、口裏を合わせて、国家転覆を成し遂げることこそが、ただひとつ、星の生きる道だ。そうだ、癖のあるこの連中くらい使いこなせないようでは、これから始まる政治運営だっておぼつかない。
けれど、口裏を合わせようにも、国家転覆者たちの浅知恵は、星に黄衣を着せたところで打ち止めで、もはや何の逆転の材料も持ち合わせていないらしい。
「何とかならないの貞人さん! なんかその背中の袋から便利な道具出してよ!」
追いつめられた宮人たちが衝立の向こうで、非文明の化身たる貞人に向かって叫んでいる。
「もう少しです、何とか場を繋いでください……あっ、引っ張らないで!」
直後、あっ、という貞人の小さな声と、布袋が裂ける音が重なった。
とたんに、衝立の脚の下から、甲骨やら、金属棒やら、その他、非文明的な物品が転がり出てくる。どれもこの状況を変えてくれるものではない――いや。
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