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「見よ、これは歴代天子に伝わる玉佩である! 身分の低い占者や呪術医が貴人を診るとき、本人ではなく、肌身離さず使っている玉を使って、それに移った貴人の気を見るという。すなわち玉とは人の移し身、その人物そのものである。先だって崩御された陛下は、これを使って、とある貞人に自分の命数を占わせた。これは周知のことと思う」
一気にそれだけ言うと、自分の心臓が穿たれていないことに気付いて、星は滝のように発汗した。素早く周囲を見渡す。
ある者は、死を前にした星の弁解を残酷に愉しみ、またある者は秩序の破壊者に対する怒りを向けていた。
観衆の思いは喜怒哀楽様々のようだが、確かなことは――最も重要なことは、まだ星は生きている、という一点だ。
星はあらためて息を吸った。
「なれど、それは表向きのこと。真意は別にあった。陛下はあるとき、ご自分が、少量ずつ毒を盛られていることにお気づきになった。当初は犯人を見つけようとしておられたが、快復の見込みが遠くなるに至り、次第にそのお考えは、後事を託すべき人物の選出に傾けられるようになった。
陛下は後継を決めかねておられた。奸臣・衛粲率いる宦官の跋扈によって荒廃したこの朝は、終末の時を迎えている。この危急存亡の秋に、血統はもはや後継の十分条件たりえない。何か、新しい風が必要だと感じておられたようだ」
毒。陰謀。
我ながらどれも手垢のついた妄言だ、と星は自嘲する。
想定通りに観衆からは嘲笑が聞こえてくるが、話し続けることだけが、星の首を星の頭にとどまらせる。
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