六章 真相

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そう思い至ったときに、熱と骨の焼ける匂いが鼻をくすぐった。 ――そういうことか。 星はようやく全てに得心が行って、大仰に腕を広げた。そして階下の観衆に紹介する。 「では、お出ましいただこう。先帝から貴い使命を託され、万難に遭いながらも義を貫き通した、当代最高の貞人どのに!」 待ちかねた、とばかりに衝立の影から現れたのは、古代、王に仕えた高位の祭祀者さながら、錦の衣をまとう貞人。恭しく胸に甲骨板を抱えている。 星は高位の官僚で、午門の前まで立ち入れるのもまた、高位の官僚だけだ。高位の官僚とは、この国では最高の学識者を意味する。古代文字も読めれば、令亀の罅の意味も解する。 その場のだれもが理解していた。甲骨板に刻まれた、星の即位の吉凶を天に問う古代文字。そこに、明瞭に縦に走る罅は、吉兆のあかしである、と。 それを高らかにしめし、貞人は群集に告げる。 「前王朝の命数は尽きました。そしてこれなる星姓の女子には、前王朝を徳を継承する、瑞祥あふれる、あらたなる天子の兆がおありでございます」
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