おたずね貞人と笑わずの幇主

一章 高貴な依頼

まずは扉を薄く開け、外界の様子をうかがう。

扉を開けるとまず石が飛んでくる――

はずだったのに、なぜか今日は飛んでこない。

貞人は、近所に住んで欲しくない、不審者の筆頭職業。投石は茶飯事だが、いつもの投石児童たちは、春宵の家の前で、石を取り落として青くなり、膝を激しく震わせていた。その一人がやっと絞り出すようにつぶやいた。

「あの童顔貞人、とうとう何かやらかしやがった……！」

児童の視線の先。

砂まみれの古い版築の壁が並ぶこの邑(むら)には場違いな、金銀珠玉で飾りたてられた轎(かご)が、春宵の家の前に鎮座していた。