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轎を降りて歩き出すと、宮城内の建造物は、とにかくひとつひとつが人を申し訳ない気分にさせる規模感だった。
敷地一面に敷き詰められた高級な黒い磚なんて、何百万枚あるのかわからないのに、どれも傷一つない。傷がついたら即交換しているのかもしれない。
宮中が砂から解放されていることも驚きだった。数軒先の典当まで行くだけで砂埃を払うはめになる市街と違い、ここは沓が本来の色を失うことがない。一体どれほどの労力によって清潔さが保たれているのか――
「っ!」
と、宮中見物に意識を取られていた春宵は、前を行く背に衝突した。
痛む鼻を押さえて、目だけやる。すると、先導の文官が急に足を止めていた。二角五爪の龍紋をあしらった、二つ目の巨大な門の前で。
「楊貞人、本官が案内つかまつるのはこれまでです」
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