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「無礼者。お前に呼ばれる筋合いはない」
「すみません……」
冷たく鋭い声に身が竦むが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「さくらは、どこにいるんですか?」
「お前が殺したんだろう」
憎悪と共に放たれた言葉に息が詰まりそうになる。
「……殺すも何も、生きてるんでしょうさくらは! 雪女が火事で焼け死ぬはずがない!」
「お前があの子を人間にしたから死んだんだ」
洞窟の中だというのに吹雪が打ちつけてくる。
「人の子を身に宿している間は雪女も人の体になる。あの子が人になって死んだのはお前のせいだ」
自分を支えていた力がなくなり、立っていられなくなった。嘘だ、と云いたいのに喉が詰まって声が出ない。
さくらは僕のせいで死んだ。心の何処かでは分かっていたのに、認めたくなくて逃げ続けていたのだ。
さくらの母親がこちらに近づくにつれ寒さが強くなり、凍り付きそうなほどになった。
氷のような手で髪を掴まれ、顔を上げさせられる。
冷たい炎があるとすればこのような色なのだろうと思わせる怒りを帯びた無慈悲な瞳。
ああ、彼女にも僕を殺す権利がある。
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