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スイミングスクールのバスが到着して、女の子に抱えられたまま私も一緒に乗りこむ。
空席の方が多い車内で歩道側に女の子は座ると、見送る男の子に向かって小さく手をふった。
女の子の膝に乗せられた私はやれやれと思う。
首も肩もないけれど、何だか節々が凝ったわよ。
バスの揺れを感じながら、だんだんと眠くなってくる。
今さっきまであんなに気が高ぶっていたのに。
「……花占いの、通りだった。勇気出してよかった」
女の子のひとりごとに私の意識が少し浮上して、ニヤニヤと笑いたくなった。
あのタンポポやるじゃない。
ちゃんと自分の意思をまっとうしたんだわ。
しかも成就させたんだから、たいしたものね。
もうすぐ会えるだろうから、ちゃんと教えてあげなきゃね。
私知ってるのよ。
人間は死んだら天国へ行くんでしょう。
そこには花が咲き乱れているらしいじゃない。
ということは、私たち花も死んだら天国へ行くんだわ。
ねぇタンポポ。
あなたの願い通り、小さな二人の恋は成就したわよ。
私が知らせを届けに行くから、ちゃんと聞いてよね。
そのあとにまた歌ってほしいわ。
それを隣で聞かせてほしいの。
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