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ポケットの中のスマホが振動して俺を呼んだ。
炎天下の外に日陰はなく、俺は直射日光を浴びたまま応答する。
『なぁ、渡せたか?』
相手は病院にいるおっさんだった。さっきの今で気が早い――と空虚になった心で呆れ笑う。
『直接でなくても良いんだ。届けられたらそれで良い』
片手にはスマホ。もう片方の手には、未だずしりと重たい貯金箱がある。
『なぁ、頼むな。なぁ――』
俺は何も答えられずに、地面にしゃがみこんで嗚咽をもらした。
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