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大学から帰って二人ともバイトがない日は、吏希とコンサート映像を見て過ごすことが増えた。
家族がいる日はリビングではなく僕の部屋でカーペットの上に座り、ポータブルブルーレイプレーヤーの小さな画面になってしまうのが残念だけど。
コンサート映像が消える。吏希は帰るために立ち上がってハンガーから上着を取った。
「吏希はレイズのファンになった?」
「なってないな。何で?」
「だってこんなに一緒に見てくれるんだから、ファンになったのかなって思って」
「曲もだいぶ覚えたし、いくつか好きな曲もある。でもファンではない。一緒に見てるのは、楽しんでる奏斗を見たいからだから」
じっと見つめられて視線を下げた。好きだと言われたけど、吏希がどうしたいのか分からなくてモヤモヤする。
大きく深呼吸する。意を決して視線を上げた。
「吏希は僕のこと好き……なんだよね?」
「ああ」
「でも、それでどうしたいのか言ってこないよね。付き合いたいのか、このまま幼馴染でいたいのか」
「付き合えたら嬉しいけど、俺が付き合いたいと思っても、奏斗が思ってなければ付き合えないだろ? ……いや、待てよ。とりあえず付き合うか?」
「……軽いね」
吏希の言葉に脱力する。
「重く捉えなくていいから、軽く考えて。俺は付き合いたいと思ってる。試しに付き合って、無理だと思ったら幼馴染に戻ればいいんじゃないの?」
「そんなんでいいの?」
「ああ、付き合ってくれるっていうなら、すっげー甘やかすけど」
すでに表情が甘ったるい。
「……考えさせて」
「じゃあこの話は一旦保留だな。本当に重く考えなくていいからな」
「うん、分かった」
「じゃあ俺は帰るから」
吏希は上着を羽織ると部屋を出ていった。
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