コンサート映像

3/3
前へ
/24ページ
次へ
 大学から帰って二人ともバイトがない日は、吏希とコンサート映像を見て過ごすことが増えた。  家族がいる日はリビングではなく僕の部屋でカーペットの上に座り、ポータブルブルーレイプレーヤーの小さな画面になってしまうのが残念だけど。  コンサート映像が消える。吏希は帰るために立ち上がってハンガーから上着を取った。 「吏希はレイズのファンになった?」 「なってないな。何で?」 「だってこんなに一緒に見てくれるんだから、ファンになったのかなって思って」 「曲もだいぶ覚えたし、いくつか好きな曲もある。でもファンではない。一緒に見てるのは、楽しんでる奏斗を見たいからだから」  じっと見つめられて視線を下げた。好きだと言われたけど、吏希がどうしたいのか分からなくてモヤモヤする。  大きく深呼吸する。意を決して視線を上げた。 「吏希は僕のこと好き……なんだよね?」 「ああ」 「でも、それでどうしたいのか言ってこないよね。付き合いたいのか、このまま幼馴染でいたいのか」 「付き合えたら嬉しいけど、俺が付き合いたいと思っても、奏斗が思ってなければ付き合えないだろ? ……いや、待てよ。とりあえず付き合うか?」 「……軽いね」  吏希の言葉に脱力する。 「重く捉えなくていいから、軽く考えて。俺は付き合いたいと思ってる。試しに付き合って、無理だと思ったら幼馴染に戻ればいいんじゃないの?」 「そんなんでいいの?」 「ああ、付き合ってくれるっていうなら、すっげー甘やかすけど」  すでに表情が甘ったるい。 「……考えさせて」 「じゃあこの話は一旦保留だな。本当に重く考えなくていいからな」 「うん、分かった」 「じゃあ俺は帰るから」  吏希は上着を羽織ると部屋を出ていった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加