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家で二人の時は手を繋ぐようになった。なかなか慣れない。レイズのライブ映像を一人で見ていても、吏希の温もりを思い出してしまう。声援を上げることもなく、おとなしく画面を眺めるようになった。
「今日は大学終わったら暇か?」
並んで向かいながら問いかけられる。
「今日は二十時までバイトがある」
「その後は?」
「レイズの生配信見るよ」
全てのコンサートが終わり、レイズ四人での打ち上げを生配信してくれる。
「そっか。今日も姉さんと見るの?」
「うん、そうだよ」
「相変わらず仲良いな」
吏希はふふっと笑う。
「もしかして、遊びに誘ってくれたの?」
「遊びじゃなくてデートだから。でもデートはいつでもできるし、俺のせいで好きなこと我慢して欲しくないから。姉さんとも約束してるんだろ?」
頷くと、気にするな、と髪を豪快に撫で回された。
バイトが終わり、姉さんの部屋で配信が始まるのを待つ。
画面が明るくなり、アズサくんシンくんユイトくんの三人がこちらに向かって手を振った。リオンくんはいない。
「アズサ、顔が良すぎる!」
姉さんは叫びながら画面に向かって手を振り返した。
『こんばんは、レイズです。でも三人です』
『リオンは寝ちゃったから、寝起きドッキリしようと思います』
三人が捌けると後ろのソファでリオンくんが横になっていた。カメラが近付き、リオンくんの寝顔が映し出される。
「リオン本当に寝てるの? こんなに綺麗な寝顔ってある?!」
姉さんが食い入るように画面を見つめ、すぐに僕に目線を移す。
「どうしたの? リオンの寝顔だよ? こんな貴重な映像、絶対にいつもなら叫んでるじゃん。体調悪いの?」
心配をされてしまって慌てて首を振る。
「えっと、……見惚れて声も出なかっただけ」
「それならいいけど」
本当は吏希の誘いを断ってしまったことが気がかりで、画面に集中できていなかった。
『リオン、起きて』
シンくんがリオンくんの肩を叩く。リオンくんは身じろいだ。
『ユイト、あと五分……』
『いや、俺、シンだから』
そんなやりとりに姉さんは大興奮。
「普段からユイトに起こされてるの? 本当に付き合ってるの?!」
肩を掴まれて思いっきり揺すられる。
すぐにリオンくんはアズサくんに無理矢理身体を起こされた。寝ぼけていたけれど、配信が始まっていると知ると驚いて慌てふためく。
それからは雑談が始まり、姉さんと話しながら見るけど、やっぱり集中できない。
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