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デート計画
今日はいつもより少しだけ早く家を出る。吏希はまだいない。いつも待ってもらっているから、今日は僕が待ちたくて。すぐに吏希は出てきて、僕が待っていると目を瞬かせた。
「待たせて悪いな。俺、家を出るの遅かったか?」
吏希はスマホで時計を確認する。いつも家を出ている時間だったようで首を捻った。
「僕が早く家を出ただけ。いつも待たせてごめんね」
「俺は好きで待ってるから気にしなくていい」
「今日は僕も好きで待ってるから気にしないで」
だんだん言っていることが恥ずかしくなってきて尻すぼみになってしまう。でも声は届いたようで、そうか、と吏希は少し照れくさそうに笑った。
「行こうか」
そう声をかけられて歩く。
「あのね、いつも吏希が僕に合わせてくれるでしょ? 家ばかりになってるし、吏希は行きたいところないの?」
「俺に気を遣わなくていいって! 奏斗とのお家デート楽しんでるし」
「気を遣ってるんじゃないよ。僕が吏希の行きたいところでデートしたいだけ」
返事がなくて、迷惑なのかな、と不安になっておずおずと隣を見上げる。吏希は目をまん丸にしていて、僕と目が合うとじわじわと顔に赤みが差した。顔を背けて片手で顔を隠してしまう。
「どうしたの?」
「いや、今まで俺の中ではデートだったけど、奏斗にもデートだと思ってもらえていたのが思った以上に嬉しかったし、誘ってもらえて舞い上がって顔がにやける」
赤くなった顔を手であおいで、熱い、と僕に目を向けてくれてはにかんだ。
僕も顔が熱くなった。嬉しそうにしている吏希を見て、心はポカポカと温かくなる。
「吏希は何がしたい?」
「そうだな……。バーベキューはどうだ?」
「いいよ」
「本当はグランピングとかしてみたいけど、泊まりは無理だしな」
「どうして? 楽しそうなのに」
吏希はジト目を向けて大きく息を吐き出した。
「泊まりならデートは無理。好きな相手と一緒に寝られるほど俺は図太くない。他にも誰か誘えばいいけど、今はデートの計画を立ててるだろ」
顔から煙でも出てしまうのではないか、というほど熱くなった。
「そうだね。……えっと、バーベキューは家の庭でやる? 道具あるから」
「準備も片付けも面倒だから手ぶらでやれるところに行こう。それに家だと親も参加してきそうだし」
庭でお肉を焼いていたら食べたくなる気持ちは分かる。
日時と場所を決めて、無事に予約も取れた。すごく楽しみだと吏希が笑う。僕も待ち遠しかった。
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