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幼馴染と恋人
家に着いたのはまだ日が沈む前。オレンジ色の西陽が辺りを暖かな色に染めている。
駐車してエンジンを止めた。
吏希はまだ眠っている。小さな頃は泊まったりしていたのに、吏希の寝顔を思い出せない。もう少し見ていたいだなんて、思ったことだってないはずだ。
でも、早く自分の気持ちを伝えたくて、吏希の肩をそっと叩いた。
「着いたよ。起きて」
んっ、と鼻にかかった声を漏らして瞼がゆっくり持ち上がる。
「おはよう」
顔を覗き込んで言えば、吏希は大きく目を見開いて飛び起きる。辺りに視線を走らせて、大きく息を吐き出した。
「悪い。少しだけのつもりだったのに、家まで寝て」
「寝ていいって言ったのは僕だから気にしないで。吏希はこの後は暇? 予定あったりする?」
「ない。暇! ものすごく暇!」
食い気味に言われて呆気に取られる。まだ僕といたいと思ってくれたのかな。そう頭をよぎると口元が緩んでしまったけど、すぐに引き締めた。顔に力を入れて見つめる。
「話があるから聞いてほしい」
「……今日じゃなくても良くないか?」
吏希は顔を下に向けて呟く。
「でもこの後予定はないんだよね? それなら僕の話を聞いてほしい」
吏希は少しの間無言だったけど、大きく息を吐き出して分かった、と頷いた。
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