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「今度こそ振られると思った」
「え? 何で? 今日の僕、つまらなさそうだった? すごく楽しかったんだけど」
「いや、楽しそうに見えたよ。でも、だから友達としてしか見れないって言われるのかなって。家に着いたら硬い表情で『話がある』なんて言われたから」
だから吏希は僕が話があると言った時に、聞きたくなさそうにしていたのか。ごめんねと言えば、穏やかな顔で首を振る。
「今日聞けてよかった。嬉しすぎて、嬉しい以外の言葉が出てこない」
この顔を見られて良かった。言えて良かった。腕を伸ばして吏希の首に絡ませた。しがみつく僕に戸惑いつつも、吏希が背中をポンポンと叩く。
「あのさ、そんなに急にひっつかれると困る」
「ごめん、嫌だった?」
慌てて距離を取る。吏希の気持ちを確認しないまま抱きついてしまった。
「嫌なわけないだろ! ……そうじゃなくてさ、付き合いたいって言ってくれただろ? 奏斗に触りたくて仕方がない。だからひっつかれると我慢できなくなりそうだから困るってこと」
吏希の言葉に全身が茹だったように熱い。
触りたいってどこまでするんだろう。キスだってその先だって未知の世界すぎて想像ができない。でも、自分から抱きついてしまうくらいには吏希を求めている。
「あのね、我慢なんてしなくていいよ。だって僕から抱きついたんだよ。僕だって吏希に触りたかったってことでしょ?」
おずおずと腕が伸びてきて、僕の肩に触れる。
「本当にいいの?」
目を合わせて頷くと引き寄せられて腕の中に閉じ込められた。抱きしめられるのは二回目のはずなのに、キツイ抱擁に緊張する。気持ちが伴っているからだろう。
二つ分の心音が同じ速さで大きく鳴り響いていた。
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