幼馴染と恋人

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 頭に柔らかな感触。リップ音が鳴り、キスをされたのだと気付く。抱きしめられたまま身体に力が入ってしまう。それを感じ取り、嫌なら言って、と吏希の熱を孕んだような囁きが鼓膜を震わす。ゾクリとして身体が跳ねた。身体はますます硬直するけれど、嫌などではない。恥ずかしくて、でもそれ以上の多幸感にこの先を期待してしまっている。 「嫌なわけないよ」  胸に顔を埋めているから声はくぐもっていたけれど、ゼロ距離にいる吏希には届いたみたいだ。  少し身体に隙間があく。顔を見合わせると片手が頬に触れる。大きな手が心地よくて擦り寄り目を細めた。  耳に唇が当たった。ゾクリとして、吏希の服をキュッと握る。少しずれて頬にも優しいキスをくれた。  額をくっつけられて、至近距離で見つめ合う。吏希の熱を帯びた瞳から目が逸らせない。 「嫌なら嫌って言えよ」  嫌って言わせるつもりなんてないほど早く唇を押し付けられた。すぐに離れてまた触れる。じゃれ合うように何度も唇を重ねた。  一際強く押し当てられて少し距離ができる。 「まだしてもいい?」 「うん」  初めてのキスは温かくて柔らかくて、ドキドキするのに心の奥は穏やかで。吏希と心も近付けたような気がした。  もう一度唇が重なる。先ほどとは違い、遠慮がちに舌が口内に入ってきた。舌先が触れ合う。唾液の絡み合う音が合わさる口内で響いた。  熱い。合わさっている舌だけでなく、顔も身体も心も。  舌を絡められ、吏希の手が僕の後頭部と背中に回る。 「奏斗……」  角度を変えるたび甘い声で名前を呼ばれる。その声に胸の高鳴りを抑えられず、服を掴んでいた手を吏希の背中に回した。応えるように掻き抱かれる。  どんどんキスは激しくなっていき、唇にできる隙間から二人分の熱っぽい息遣いが溢れた。恥ずかしくて頭が沸騰しそう。  背中に回っていた吏希の指先が裾から入って直接肌に触れる。身体をピクリと跳ねさすと、背骨に沿って撫で上げられた。 「んっ、はぁ、あっ……」  くすぐったいのと気持ちいいのが混ざった感覚に喘いだ。今度はゆっくり下がっていき、ズボンと下着の中に指が入って尾骶骨を掠めた時に驚きすぎて腕を突っぱねてしまった。 「ごめん、調子に乗りすぎた」  吏希は眉尻を下げて僕から離れる。唾液で濡れた口元を拭ってくれた。 「僕こそごめん。びっくりしただけだから」  嫌だったのではない。それだけは伝わってほしい。  頭をポンポンとされる。吏希はホッとしたように目を細めた。
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