幼馴染と恋人

5/5
前へ
/24ページ
次へ
「もう何もしないから。この後はどうする? 夕飯食いに行く?」  外は薄暗くなっていた。いつもなら夕飯を食べている時間だ。 「僕はあまりお腹減ってない」 「昼間いっぱい食べたからな。俺もそんなに減ってない」 「ううん、そうじゃなくて。胸がいっぱいで食べられそうにない」  先ほどまでの甘美なキスを思い出して、頬を両手で覆う。 「せっかく止めれたのにそんなこと言うなよ」  吏希が肩を落として大きなため息を吐いた。 「じゃあどこかに行くか、何かしないか? 奏斗はどうしたい?」  吏希としたいこと? 思考を巡らせ、ハッと思い浮かんで口を開いた。 「一緒にレイズの打ち上げ生配信を見たい」 「……いいけど、見たんだろ?」 「でも最初あまり楽しめなかったんだ」 「何で? つまんなかった?」 「違う。吏希のことばかり考えてたから」  吏希は目を丸くする。 「だから全然楽しめなかった。吏希と付き合えて一緒にいる今なら楽しく見れると思うんだ」 「そうか。一緒に見よう。俺は楽しんでる奏斗を見たいし。俺と付き合ってアイドル好きなのを我慢もされたくない」 「ありがとう。でもレイズは推しだから。好きなのは吏希だから」  吏希は目頭を揉む。こちらに向けられた瞳は潤んでいるように見えた。 「奏斗からこんな言葉が聞ける日が来るなんて……。もう一回言って。俺のこと好きってところだけ」 「吏希が好き」 「すげー嬉しい。よし、見るか」  スマホを操作してアーカイブ配信を再生した。 「きっと吏希も楽しめるよ。アズサくんが吏希のこと話してたし」 「俺、アズサと知り合いでもないけど?」  首を傾けて目を瞬かせている。  シンくんとアズサくんとユイトくんが映し出された。  僕は自分から吏希の手を握った。吏希は驚いていたけど、すぐに顔を綻ばせる。 「あのさ、すぐって訳じゃないけど……」 「ん? どうした?」  顔を見合わせる。全身が熱くなるけど、震える口を開いた。 「一緒にグランピングに行きたいね」  少しの間があり、吏希が照れたように頷いた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加