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二限まで授業を受け、カフェテリアに向かう途中で吏希に会った。一緒に昼食を取ろうと注文をして食事を席に運ぶ。座る前に吏希が僕の後ろに立った。
「どうしたの?」
「上着脱げよ」
薄いカーディガンを脱がされてイスに掛けられた。脱がされた意味がわからないけど、寒くないから腰掛けた。
いただきます、と手を合わせて食べようとすると、吏希は食事に手をつけずに僕をジッと見てくる。
「何? これが欲しいの?」
僕は自分が注文したタコライスを指す。吏希は首を横に振った。
「俺たちも周りにできてるって思われてるのかなって」
目を瞬かせる。俺たちって僕と吏希ってことだよね。
「何で?」
「奏斗が言ったことだろ? 上着を脱がせてたから絶対付き合ってるって」
吏希は楽しそうに頬骨を上げる。
確かに言った。でもそれはリオンくんとユイトくんだからであって。一般人の僕と吏希のことなんて誰も見てないよ。そう思ったけど、吏希は昔からモテていた。それは今でも健在。視線を走らせると、こちらを見て話している人がいるような気がした。
「なんでそんな勘違いされそうなことするの!」
「なんでだと思う?」
答えずに吏希は唐揚げ丼を頬張り始めた。吏希がなんでそんなことをしたのか分からないけど、それ以上話そうとしないから僕もタコライスを食べる。
「奏斗、ついてる」
口の端を指で拭われ、吏希が指先を舐める。カッと頬に熱が集まる。歓声やら悲鳴やらが聞こえ、周りを見ることが出来ない。
リオンくんとユイトくんもそこまではやっていない。本当に何を考えているんだよ!
吏希は気にした様子もなく、ご機嫌に唐揚げ丼をかっこむ。僕もタコライスを口に運んだ。
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