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コンサート
待ちに待ったコンサート当日。手作りの応援グッズも準備万端。行けない姉さんのためにグッズを買うから、昼前には家を出る。吏希とは夕方に現地で待ち合わせをしようとしたけれど、一緒に行きたい、と言われて家の前で待ち合わせをした。
昼過ぎにはコンサート会場に着いて、物販の列に並ぶ。すでに長蛇の列。隣に立っている吏希は顔を引き攣らせている。後悔していそうだ。
「僕が一人で並ぶから、どこかで時間を潰してていいよ」
「一緒に来た意味ないだろ」
「じゃあ並びながらレイズの曲聴く?」
スマホにイヤホンを刺して吏希に渡す。吏希は片方を耳につけて、もう片方は僕の耳に突っ込んだ。
「どれがオススメ?」
吏希は僕の肩に腕を回し、僕の目の前でスマホをスクロールする。近すぎて全身が熱くなる。
「えっと、どれもオススメだからランダム再生するね」
適当に曲をタップする。音が鳴ると吏希は僕の手にスマホを握らせて肩に回した腕も下ろした。同じイヤホンを使っているから腕は触れ合う距離だけど、先ほどよりは離れてホッと息を吐き出した。
「あっ、コレは聞いたことある」
サビになると吏希がボソリと呟いた。お菓子のCMで流れていた曲だから、吏希も聞き覚えがあるらしい。
その後もドラマの主題歌やアルバムにしか入っていない曲が流れる。音楽を聴きながら喋っていたから、時間が早く感じられた。姉さんに頼まれていたグッズを買えて安堵する。僕もお目当てのものを買えて満足だ。
夕方、開場時間になり心音を轟かせながら入場する。アリーナ花道横の席で卒倒しそうだった。ここをレイズが通るんだよね。こんな至近距離で見られるなんて思わなかった。始まってもいないのにソワソワと落ち着かない。
「大丈夫か?」
吏希が僕の目の前で手を振る。
「だ、大丈夫! ちょっと落ち着きたいけど」
手のひらに人を書いて飲み込んだ。全然落ち着けない。
「ここ、レイズが通るんだよな? 奏斗の姉さん残念だったな」
姉さんの話題を振られて思い出した。バッグからうちわを出す。
「姉さんが『私の代わりに応援してきて』って言ってた」
姉さんが作ったアズサくんの手作りうちわを吏希に渡す。僕は自分で作ったリオンくんのうちわ。『リオンくん、指さして』と書いたけど、ファンサが貰えるかもしれない席で胸が高鳴る。
「……これを俺が持つのか?」
姉さんが作ったうちわには『アズサ、結婚して』と『アズサ、投げちゅーして』と書いてある。戸惑う気持ちは分かるけど、僕はリオンくんのうちわを持っているから吏希にはアズサくんのうちわを持ってもらわなければ。
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