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映像が流れる。最初こそ吏希が気になっていたけど、次第にレイズの映像に夢中になる。気付けば立ち上がっていたし、合いの手を叫び、こちらに向かって手を振るリオンくんに振り返した。
姉さんと一緒に見ている感覚になっていたけど、隣にいるのは吏希だとふと思い出した。ひかれていないかな、と恐る恐る吏希に目を向ける。
吏希はとろけそうなほどの甘い微笑みで僕を見ていた。
顔が熱くて咄嗟に視線を逸らす。最初よりも少しだけ距離を取って座った。
「ごめん、一人ではしゃいで」
「いいんじゃないの。他の男を見てテンション上がってるのはちょっと妬けるけどさ、リオンには恋愛感情があるわけじゃないって言ってたし。俺は奏斗が楽しんでいるのを見れるのが嬉しい」
そんなことを言われたらコンサート映像を楽しむどころではなくなる。顔を上に向けられなくて、視線を落として自分のつま先を見ていた。
「おい、アズサが手を振ってるぞ」
肩を叩かれて大袈裟なほど身体が跳ねた。吏希は気にした様子もなく、屈託なく笑う。もう甘い微笑みは引っ込んでいた。
「俺の言ってることは覚えていて欲しいけど、それを奏斗が気にする必要ないからな」
「だって、妬くとか言うし」
「それ以上に、奏斗が楽しんでる姿を見られる方がいいんだって。ほら、リオンだけじゃなくアズサにも手を振り返してやれよ。あっ、もうアズサ映ってないわ」
今はシンくんが器用に片目を閉じて微笑んでいる。
僕に気を使わせないようにか、吏希がシンくんの真似をするけど、ウインクできずに瞬きをしたのがおかしかった。普段だったら絶対にアイドルの真似なんてしないのに。自然と頬が緩む。
「できてないよ」
「初めてなんだから仕方ないだろ」
吏希が照れくさそうに笑う。その後は吏希に合いの手を入れる場所を教えたりしたけど、やってはくれなかった。でも楽しくコンサート映像を見ることができた。
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