第一話 倉庫の奥に眠る光

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第一話 倉庫の奥に眠る光

ここはこの高校内で『文化部にしては人一倍うるさい部活動』と言われているパソコン部の部室だ。 おそらく他の高校では放送部はそこまでうるさくないのだが、メンツがメンツ。 騒がしい奴らが集えばたちまちそこはパーティと化す。 このメンバーなら吹奏楽部の楽器の音に勝てる自信もある。 それが災いしたのか、私たちは体育館の隣に創設されている謎の和室に押し込まれていた。 うるさくしても、隣の体育館で活動している運動部に掻き消されるため迷惑にならない。 というわけで私たちの部室は和室である。 パソコン部ってなんだ? ノートパソコンしか触れる機器がない。 「チョコレートいる人〜」 「はーい!!はーい!!」 先輩も後輩もおらず、2年生しかいない部活動。 気楽に活動できるのはいいのだが、廃部まで秒読みだ。 未来が暗すぎる。 「はぁ!?何テストでいい点取ってんのよ瑠人(りゅうと)のくせに!!」 「くせにってなんだよ!?努力の結晶だって……!」 ろくな部活動なんてできないし、私は部長なのに威厳もないから誰も言うことを聞いてくれない。 「待って、わけわからん!!叶歌(きょうか)、ちょっとこの問題……」 「うるっさいっ!!!」 私はついに叫んだ。 「なんだよ、いつものことだろ」 ケロッとした表情でそんな事を言うのは光坂 栄人(ひかりざか えいと)。 この年ごろになって思春期なのかそっけないしスカしてきているめんどくせえ男だ。 前まではもうちょっと素直だったのに。 でも、勉強はできるしある程度空気は読めるから助かっている。 「叶歌の方がうるさいよ?」 本当のことだが、誰のせいだと思っている。 この発言は平石 沙綾(ひらいし さあや)のものだ。 素直だけど時々吐く毒が痛い。 思いやりの心はちゃんと持ってるのに……。 「チョコいる?甘いもの食べて落ち着こう?」 この気遣いは西森 ルル(にしもり るる)。 この部活で最も大人しい存在と言える。 とにかく優しい。 彼女への信頼度は比較的高い。 「あ〜ごめんね!部活動中だったね!」 ちゃんと反省するのは吉住 奏(よしずみ かなで)。 この子は素直で思いやりがある。 時々突っ走っちゃうけどそこもまぁ反転すれば長所だ。 意外と一番ものをはっきり言えたりする。 「すみませんでした」 きっちり猛省してるのは淡島 瑠人(あわじま りゅうと)。 この前私がガチギレした結果がこれである。 普段はおちゃらけているが反省するところは反省する。 尚、数分後に忘れるところまでがワンセットだ。 「はぁ……今、部活動中!課題するな!テスト自慢するな!お菓子食べるな!!」 「まぁまぁ、私たちしかいないんだからいいでしょ?」 沙綾は呑気にそんなことを言ってくる。 パソコン部の中でもパソコンの技術はピカイチのくせに。 「そんなんで後輩が入ってきたとど〜すんのよ〜〜!!」 「逆にこれくらいホワイトのほうが入ってくれるのでは……?」 ルル……それじゃあ本気でパソコンを使いたい人が入ってくれるわけがない。 いや、そもそも今の時点でノートパソコンいじって動画編集くらいしかできてないからだめだ。 容量が少なすぎる。 「はぁ……せっかくパソコン部に入ったのに……」 「あ、もう部活終わる時間だ」 「じゃあ解散!おつかれっしたー!!」 バックを持ってそそくさと部室を後にする瑠人。 その後に栄人はついて行った。 「ちょっ!部活終わりの挨拶……」 「あ〜、行っちゃったね」 沙綾はどこか他人事のよう。 こんなの部活じゃない。 同好会だ……。 「じゃあ、私も帰るね」 「え、ちょっと沙綾!」 私の声を無視して部室を出る。 本当に舐められてるな……私……。 「あ〜……挨拶する?」 ルルと奏は気まずそうにこちらを見てくる。 それが愛想笑いというのはすぐ分かった。 「……もういいや。先帰ってて。倉庫室にあいつらが出しっぱなしにしたノートパソコン置いてくるから……」 あいつらはろくに片付けもせずでていった。 全員分のノートパソコンを閉じる。 パタパタと心地いい音が鳴る。 音自体は心地よいが、アイツラの態度は不愉快だ。 本気で怒鳴り散らしてやりたい。 「私たちも手伝うよ……?」 「そうだよ!重いでしょ?」 「大丈夫。倉庫室に用もあるし」 私は二人をおいて倉庫室へ向かった。 なんだか無性にイライラする。 私は6人分のノートパソコンを抱えて足を速めた。 きっと私の顔は今般若だろう。
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