第一話 倉庫の奥に眠る光

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倉庫室は部室である和室を出て、靴箱から1年生の教室のある三階まで登って、右の方にある。 部室からとても遠い。 だから、早くあの和室から抜け出したい。 オレンジ色に染まっている校舎が夕暮れを伝える。 早く帰りたいものだ。 そんなことを考えている間に倉庫室へ着いた。 過度のストレスとノートパソコンを抱えた私はすぐ倉庫室へ入る。 ここはろくに電球もない。 おそらく倉庫室の存在を認識しているのは、私たち放送部と、放送部の顧問と、校長先生くらいか。 掃除の跡なんてなく、ホコリまみれだ。 ここは1年生の教室からも死角になっているため気づく生徒も先生も少ないから無理もない。 いつかちゃんと掃除しなければ。 こんな場所にノートパソコンを置いておくのは私の心情として不愉快だ。 だが、まともな部室を用意してもらえない不遇な扱いを受けている私たちの道具置き場はここくらいなものだ。 まぁ、私たちがうるさいせいなのもあるが。 「さて……荷物も置いたし、帰……」 視界の端に黄色い光が見える。 電源をつけっぱなしにした? いや、ノートパソコンだから、閉じれば光は消える。 じゃあ、この光はいったい……? 光の方向を見る。 それは倉庫室の奥の奥。 光らなければ確実に気付けない場所にあった。 「……?」 光を直視する。 そこにはホコリを被った立派なパソコンがあった。 光はあの画面から出ている。 「見るからにつかわれてなさそう……」 興味本位でその光に近づく。 恐る恐る、足を進める。 ゆっくりだが、確実に。 好奇心に人は抗えないらしい。 その光に触れる。 「綺麗……」 思わず口からこぼれた。 キラキラという効果音が鳴りそうな煌めき。 まるで夢を見ているよう。 その刹那、視界が真っ暗になった。 画面に腕を引っ張られている感覚を覚える。 「!?」 意識を失ったのだろうか。 衝撃とともに私は床に倒れた。
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