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私、永井孝紀は、その仏壇に手を合わせて、いつも通りに娘に昨日の出来事を色々話しかける。背後では妻の美幸が、ダイニングテーブルにお茶を注いで準備している、食器同士がぶつかる、カラン、という音が聞こえて来た。
美幸の、お茶入れたわよ、という声で私は顔を上げて、もう一度仏壇の中央に飾られている娘の笑顔に向けて視線を送る。
永井美紀、24歳で亡くなった、私達の一人娘。
今年の夏は、その初盆にあたる。
今年の春、一年間の闘病期間を経て、天に還っていった私の娘。最後まで立派に病気と戦った、私の自慢の娘。まだこうして目を閉じて手を合わせていると、すぐそばに娘がいるような気がしてくる。
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