笑う、鳩

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 暦の上ではいくら立秋になったとはいえ、8月の東京の日差しは強い。  玄関から外に出た瞬間、強烈な太陽の光が顔面に照り付け、視界が一気に露出オーバーになる。思わずきつく目を瞑り、瞼の上から照り付ける太陽の光を左手で影を作りながらゆっくり目を開ける。白一色だった視界が徐々に戻ってくる。私が玄関から出た気配に驚いた鳥が、電線から飛び立つ羽根の音が聞こえてきた。  鳥さんには悪い事をしたな、と思いつつ車に乗り込み、バッグを助手席に置く。  バッグの中に日記が入っているのを改めて確認した後、中川さんから娘に届いていた年賀状をバッグから取り出す。カーナビに年賀状に書いてあった住所を入れ、案内開始をタッチする。目的地の茨城県水戸市まではここから2時間もかからないようだ。夕方には東京に戻ってこれるな、と思いつつ、車をスタートさせた。
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