第2話 残された者たちの決意

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ユラシルの父親はエマリエーカ王国の騎士だった。 母親はユラシルが物心つく前に病死。よってユラシルは騎士である父親に男手一つで育てられ、やがて騎士になるべく父親に虐待紛いの指導を受けてきた。 ユラシルの中に生まれながらに持っていた物事を知りたいという探求心は父親の指導によって抑え込まれ、五歳にして感情の起伏が薄い少年になっていた。 ただひたすらに己を鍛える日々。強くなりたいなんて微塵も思っていなかった少年は、しかしその考えに反して凄まじい成長を遂げていく。ユラシルの成長を見た父親はユラシルが八歳になった頃にエマリエーカ王国の王宮にて行われる成人した騎士訓練生たちの訓練に放り込み、さらなる成長を望んだ。 だがそれをきっかけに、父が騎士長を務める同い年のシービスと出会い、仲良くなって共に遊ぶようになり、ミラとも出会った。 同い年で自分と同じような境遇のシービスと、自身の体質に苦悩していたミラと友達になったことで抑え込まれていたユラシルの本質が露になり、それにユラシルも気づき始める。 〈キミも同じだね〉 「ああ、なんとなくだけど記憶にある………けど、なんか違うんだよな」 〈何が?〉 「親父の様子だ。確かに俺を立派な騎士にしようとはしてたけど、あそこまでエグい指導はされてねえ。俺が疲れたら訓練は終わったし、騎士訓練生の中にいてもよく見てくれてた。……なんつーか、歪んでるんだよな」 〈きっとそれがユラシルが歴史を変えた影響として表れたんだろうね。そしてこれから決定的に違う出来事が起きてしまうよ〉 「え…?」 ユラシル・リーバック、十二歳。 夕日が差し込む自宅の一室。 ───実の父親を殺害し、亡骸の側で立ち尽くす血塗れの少年。
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