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「………………………………」
〈キミにとっては衝撃的すぎる光景だよね。無理もないよ、キミの父親は厳しくも思いやりがあって、騎士らしくエマリエーカ王国を守って戦士したんだから〉
「………親父のことは、別に恨んでもなかった。死んじまった時はもうどうでもよくなってはいたけど……でも……」
〈殺そうとは思いもしなかった〉
「………」
〈キミが父親に関心を持たなくなったのはキミが成人した頃だったね。けどユラシルは十二歳という子供の頃に父親を殺した、殺さなくちゃいけなかったって言うほうが正しいかな?〉
自分の父親が死んだのを知ったのは騎士だったシービスから聞いた時。けれどその頃には父親への関心が皆無だったことから何も思わなかった、生きていようが死のうがどうでもよくなっていた。
……でも、殺してやろうなんて一度も思わなかったのは事実で。
だからこそユラシルの生い立ちが理解出来ず、この光景が受け入れられなかった。
「……まさか、これが最初の…」
〈いや、この出来事についてユラシルは自身で奮起することは出来なかった〉
「…なら、なんのためにこの記憶を?」
〈必要だからさ。この先にある一つの出会いが無かったら、きっとユラシルはユラシルになっていなかったはずだから。もしかしたらキミみたいになっていたかもしれないくらい大事な出会いの記憶だから、よーく見ておくんだね〉
そう。
その出会いこそがユラシル・リーバックを形作るほどに重要で、かけがえのない物。ユラシルの根底にあり続け、支え、歩ませてくれた───ただ一人の師匠との出会い。
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