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「………彼が、ユラシルの師匠か」
〈父親の件は彼がいたから立ち直れた。彼がいたからこそ、数年後に訪れることになる師匠との死別も乗り越えられた。ユラシル自身で乗り越えられなかった挫折は彼の存在があったから立ち上がれたんだ〉
「……大事な人だったってのはユラシルの口振りからもよーく伝わってたし、これを見たら一際そう思えてくるよ。彼と出会ってたら、もしかしたら俺も違った道を見つけられたかもな…」
〈残念ながらそうはならなかった。何せキミの時代にはいない人物だからね〉
「……いない?ただ出会わなかったんじゃなく…?」
〈そう、もしかしたらキミがそんな風になった原因はユラシルなのかもしれない〉
「………、なんだって?それって、どういう……」
ユラシルの問いかけの途中でスカイリベルは記憶を切り替えた。何度聞いても慣れない世界が歪む音とともに景色が移り変わり、目にしたのは半壊したエマリエーカ王国王宮の王の間だった。
そこにいるのは、千年前の時代へ移動した子供姿のユラシルと傷だらけの五人の騎士、そして彼らと向かい合って立つ異形の存在たち。
景色よりも、並び立っている怪物たちが意識を引く。その怪物たちからはどういうわけか感じたことのある気配がした。
〈あれは『八類王』。『終局』によって進化させられ、世界の破滅を役目に与えられた生物たちだ〉
(『八類王』……フシクスの仲間だった奴らか…!フシクスには劣るが、どいつもこいつも化物クラスに違いない……ユラシルはこいつらと戦ったのか………………?)
千年前のユラシルの仲間たちも集結し、一触即発の空気が立ち込める中で、不意にユラシルの様子がおかしくなったのを見逃さなかった。
それは『八類王』の一体が口を開いた直後で、理由は───今しがた見たからすぐにわかってしまう。
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