第2話 残された者たちの決意

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((今の声は……)) 重なる心の声。 理解しがたい目撃。 ここが千年前の時代である以上あり得ない人物の姿が、そこにあった。 その者は襲いかかっていくセインを拳一つで床に伏せ、怪物たちと共に王宮を飛び立っていく。セインを心配して駆け寄っていくかつての仲間たちの姿は視界に映ってはいても認識が出来ず、茫然と立ち尽くしてしまう。 「どういうことだ」 掠れた声でユラシルは言った。 「スカイリベル……ここは、千年前の時代のはずだろ…、さっきの記憶はここから千年後なんだろ……なら、どうして…!」 〈呆けているのは勝手だけど、ほら、ユラシルが行ったから僕らも行くよ〉 仲間たちの静止を意に介さず飛び出していったユラシルに引っ張られる形で景色の中を移動。立ったまま運ばれるという事態に少々困惑してしまったが、ユラシルがどこへ向かっているのかは察しがつく。 きっと自分でもそうしただろう。あんな記憶を見せられて、あんなになつき、心から慕っていたのを知ってしまったら。 ……案の定、と言うしかない場面になった。 子供姿のユラシルと、千年後に現れ師匠となった男がエマリエーカ王国の外にある森の中で向かい合っていた。ユラシルは知っていても師匠はユラシルを知らず、やはり話が噛み合わず、よってユラシルはやられた。 そのやられ様は酷く、絶命必至の状態になってしまう。けれど死なずに済んだのは師匠の男の気紛れに近い配慮があったからで、重体なのは変わらないが死なないよう治癒を施していた。 〈ユラシルの師匠であるフォルスは『八類王』の一体だった。正体は『ドレインツリー』が進化した生命体。あの人間の姿は『ドレインツリー』だった頃に取り込んだ一般人だよ〉 「………」 〈ユラシルの人生でかけがえのない出会いなのはキミもわかっている通りで、この再会はフォルスの正体がどうであれ堪らない物だったから、戦えるわけもなくああなってしまったわけだね〉 「………」
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