31人が本棚に入れています
本棚に追加
セインの配慮皆無の鋭い台詞にユラシルが苦笑いしながら頭をかき、視線を足下に落としながら口を開いた。
「…十三回ってのは、『終局』を倒すまでにユラシルが体験した戦いの回数だ」
「は?何を言って……」
「ま、待ってくださいセインさん………あの、十三回の戦いの記憶を見たって、ユラシルさんが『終局』に挑んだ十三回目の戦いの記憶までってことっすか?」
「えっ……あ、ああ、そうだ」
「…どういうことだ?十三回目の戦いの記憶?シェリム、何か知っているのか?」
強張った顔で固まるシェリムにセインとユラシルが視線を向けた。
「……多分僕だけが知ってることっす。ミラさんから聞いたっすから」
「……ミラに?なんでミラが知ってるんだ?」
「この世界のミラさんじゃなくて元々ユラシルさんがいた世界のミラさんっす。きっと十三回目以降、最後の戦いを見ればわかることだから詳しい説明は省かせてください、そもそも僕も詳しくは知らないんで」
「構わねえ。そもそも俺が知りたいのはユラシルが『終局』に挑み続けた理由だからな」
「……僕も、セインさんも、ユラシルさんと一緒に『終局』と戦ったのは一度だけっす。その一度だけの記憶しかないっす。だから正直、僕にはユラシルさんの覚悟がどんな物だったのかはわからないっす……でも、セインさんなら…」
「………。そうだな、知っているのはもう俺しかいないだろう。マリーラも殺された以上はな」
セインは一拍空けてから正面に座るユラシルに顔を向けた。
「奴は究極を目指していた」
「……究極?」
唐突な単語に小首を傾げる。
「奴いわく最強の先、『終局』を倒すために辿り着かなければならない未踏の領域。そのために奴はどんな過酷な現実にも立ち向かい、未熟な体を奮い立たせて様々な強者たちに挑み踏み越えてきた。俺もその踏み台の内の一つだっただろう」
最初のコメントを投稿しよう!