もう一回説明プリーズ

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「次、で決まるか」 「ああ、決まるな」  傍観しているこちらも自然と息を呑む。  我々が一体何を傍観しているのか?それがそもそも気になる話しだろう。詳しい話をすれば、恐らく一晩かか·····るのか?  よく分からんが、とりあえず現況を伝えよう。目の前には、美男美女が向かい合っている。  あ、向かい合っているが、全然カップルでは無い。少なくとも現在は。  この美男美女、自他ともに認めるナルシストたちだ。そして、相手は自分よりも美しくない、などと常々周りに喧伝して回っている。  まあ、狭い学校での話しだ。そんなことをすればどうなるか、目に見えるだろう。二人はお互いに敵対心を強く持ったのだ。  で、あまりにも敵対心が強すぎて同じクラスになんかなった日には、担任が一日で胃潰瘍になりかねない程陰湿なやり取りをずっとしている。ルッキズムここに極まれり、とクラスメイトも嘆きかねないレベルで、だ。  しかし、これ以上空気を悪くするのも学校運営上宜しくないと校長は考えたようで、二人を正々堂々と勝負させることになった。  まず、中間、期末の学力テスト。体育祭、文化祭、とそう成績も向上させようと校長は、真の美しさとは文武両道なのだと二人を騙し·····もとい、言いくるめ、いや、説得し、他のクラスメイトたちは安心して勉学に励める状況となった。  特にテストに関しては、お互いが「もう一回!もう一回!」と泣きの一回を入れ合うように三年の夏休み目前の期末テストまで来たのだ。  それが今回だ。我々はその結果をこの目で見ることに固唾を呑んで見守っている·····そういうことだ。 「さーて、今回はどちらが一位·····って、え?」  その声に我々もつられて自分の成績表を見た。するとおかしなことになっている。いつもはそれぞれの順位が表示され、なんだったら今どきまだやるのかよ。などと言いながら一位から五十位くらいまでは貼り出されている模造紙を見るのだが、今回はなぜか個々人に用紙を配り、点数しか書いていない。  つまり順位はそれぞれ不明なのだ。 「先生、これはどういうことですか?」  学級委員長が声を上げた。すると不敵に笑う担任と共に、前の扉から現れた校長が嫌らしい笑みを浮かべている。 「もちろん、今回はノーカウントだからです」 「どういう意味ですか?ちゃんとそれぞれのテストの点数は書かれていますよね?」  困惑している生徒一同を前に教育者が浮かべる笑みでは無い。そんな文句が我々の脳裏を横切っている間に、更なる説明がされた。曰く、ナルシストたちの勝負がノーカウントであった従って、もう一度勝負をさせるために、今回はあえて順位を入れずにもう一回頑張れよ。  そう激励を全体にするため、我々他の生徒も巻き込まれた·····らしい。 「というか、君が一位を取ったからノーカウントになったんですよ?」  なんと、傍観していたこちらのせいでこのような事態になったと担任は言うのだ。嘘だろう。そんなバグがあるか。そう言いつつ、今日の授業は終了した。 「なんか、校長に頼まれてあたし達勝負してるフリしてるけど、うちのクラスのヤツらってなんで誰かが勝負してないと乗っかってしか実力出せないのかしら」 「ま、みんなライトノベルの巻き込まれる傍観者から、主役になりたい願望強すぎな天才たちで構成されてるからな。毎回、毎回、あの面々を上回る成果出すのこっちはシンドいんだよって言っても伝わんないさ」  特に独り言で我々と言いたがるある生徒は、今すぐ国外の大学にスキップで入学して研究員入りも熱望される天才さまがなぜか、こちらを主役に仕立て上げたがるのだ。 「そりゃあ、入学式の頃はね?喧嘩ップルってやつのノリでよく喧嘩してたけど、別にあたし達不仲な訳じゃないし?」 「なんだったら、幼なじみだから別に見た目でどうのこうのなんて今更な会話するわけないじゃんね」  が、どうにもこうにも誤解が解けないので校長に相談したら、面白がってプロレスよろしく芝居をさせられているという訳だ。 「マジ、あんたのおじいちゃんじゃなかったら学校に貢献するために、『もう一回』·····とか何とか言って無駄な勝負なんてしないわ」 「それは、すまん。今日、唐揚げ定食奢るから許せ」  などと噂の美男美女幼なじみカップルが、仲良くクラスメイトたちのために一芝居うって、貢献する営業『もう一回』勝負に明け暮れているなど、傍観者願望のある彼らは知らないのだった。
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