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彼女は、楠原蓮は、今日も窓の外に目を向けていた。
授業中であるにも関わらず、ワイヤレスイヤホンをして。気怠げに頬に手を当てて、窓越しで貴婦人のようなアゲハチョウに無数のアリが群がっている様を眺めている。
白磁のようなしなやかな頬。鎖骨まで伸びるピアノの黒鍵のような艶やかな黒髪。
ふと、視線がかち合う。目を細め、ニタリと口角を上げる。微笑。息をするのを忘れてしまうほどの魔力が彼女の微笑にはあった。
彼女は私が愛したあの人によく似ていた。
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