君に届けたい星

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 どうしても届けたいものがある。スバルは採取した砂を特殊な瓶につめた。 「よし、これで」  今滞在しているN九十五惑星基地から、ハツカがいるシェルターまで届くのにどれくらいかかるだろう。毎年一本送る砂をハツカが受け取って保管してくれているなら瓶は四本あるはずだ。 今回送る砂で五本目、最後になる。 「ずっといっしょにいられると思ったのに」  ハツカに言われた時、スバルは初めて気づいたのだ。自分の夢を優先させるということは、ハツカに会えなくなるということで、残されたハツカが別れを選んだらスバルは拒否できない。去っていったハツカを追いかけることすらできずに立ちすくんでいた。 「それって彼女ちゃん用?」 「うわっ……先輩」 「高校卒業してすぐ探検隊に入れて欲しいって面接に来た時は驚いたね、彼女ちゃんは反対しなかったんだ」 「されましたよ」  五年だ。長すぎる年月、ハツカの心が離れていくのを止められないと思った。 「されたけど、相手のためにあきらめるのってお互いのためにならないじゃないですか」  ただ好きでいるだけじゃいつか終わる。 俺が、ハツカの隣で恥ずかしくない自分でいるためには必要な選択だった。 「なので、待っててくれないかって言ったんです」  スバルが暗い外に目を向けて想いを馳せていると先輩が微笑んだ。 「男前だな」 「……や、からかわないで下さい」  ようやく羞恥が戻ってきてスバルはあわてる。 そういえばハツカとのことを誰かに語るのは今日が初めてだ。五年間、つらいことがなかったわけじゃない、帰りたいと望まなかったわけがない。──ああ、会いたい。 シェルターで待っていてくれているハツカにキスをしたくてしかたがなかった。
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