5人が本棚に入れています
本棚に追加
――恵菜へ
随分久しぶりに筆を執ります。そちらでは元気に過ごしていますか
二枚の便箋のさわりの部分を読んだ瞬間、胸がきゅっと締め付けられた。ほんのわずかな文字なのに、確かに父の気持ちが宿っている気がしたのだ。
――恵菜のことだから、きっと私のことを気に病んでいることでしょう。
急な別れになってしまって、本当に申し訳ない。
こちらに召されから、宏美と再会し、安らかな毎日を過ごしています。どうか心配しないでください。
ここに書かれていることが本当なら、これはあの世からの手紙ということになる。
信じたい気持ちと疑いの気持ちが交錯し、わたしは一度手紙から目を離した。
最初のコメントを投稿しよう!