届け人

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 ――恵菜へ  随分久しぶりに筆を執ります。そちらでは元気に過ごしていますか  二枚の便箋のさわりの部分を読んだ瞬間、胸がきゅっと締め付けられた。ほんのわずかな文字なのに、確かに父の気持ちが宿っている気がしたのだ。  ――恵菜のことだから、きっと私のことを気に病んでいることでしょう。  急な別れになってしまって、本当に申し訳ない。  こちらに召されから、宏美と再会し、安らかな毎日を過ごしています。どうか心配しないでください。  ここに書かれていることが本当なら、これはあの世からの手紙ということになる。  信じたい気持ちと疑いの気持ちが交錯し、わたしは一度手紙から目を離した。
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