秘密

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「燕様。もう一度、無差別大量殺人計画について整理しまっせ。確認お願いしやす」 「おう」 オヤジが、俺と話し合って決めた計画の内容を改めて述べ始めた。 「まずこの前代未聞の無差別大量殺人計画を立案したのは、ペットフード製造会社で働く新卒社員、石動燕・22歳。過去の辛い体験がきっかけで、社会や人間に対して強い恨みを持っており、嫉妬心などから若い同世代を今回の主たるターゲットに選んだ。決行の日時は2025年8月16日土曜日、時間は午後16時、『ナツノヨル』というバンドが出場するタイミングに合わせる予定。場所はさいたま市で行われる音楽フェス、『サイマーフェス』が行われる会場、住所も調査済。殺害方法はわいが用意した、目立ちにくい超小型の特殊爆弾を、わいが会場のアーティストの演奏スペースに事前に仕掛け、燕様が専用機を使用して遠隔操作にて会場内のみを爆破。犠牲者数は最大2万人以上出す想定だが、実際は負傷者止まりも多いと思われるので、最低でも死者1万人以上が目標、と。そういえば燕様。この時限爆弾装置の名前でやすけど、なんて名づけやす?首謀者が決める権利があるんでやすが」 淡々と計画の詳細を説明するオヤジが、ふと爆弾の名前を俺に決めるよう促してきた。俺は既に命名していたので、その名を奴に告げた。 「実はもう決めていたんだよ。『ズベン・エル・ゲヌビ』って名前にするぞ」 「何でっせ?"ズボンL脱げる"?」 「ズベン・エル・ゲヌビだ。ズボン脱いでどうすんだよ、公然わいせつか。そんな趣味ねえよ(笑)。星の名前なんだよ。てんびん座のアルファ星だ。ほら、俺って自然科学が好きだろ?だからそれに関する用語で、名前的にも珍しくてインパクトのあるものを使いたかったんだよ」 俺は数学と理科全般が突出して得意科目で、興味関心も強いため、この計画にもその要素は外せない重要事項だった。その中でも特に数学と天文学、化学、気象、心理学、IT関係は専門用語まで熟知している。
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