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挑発
「みらい!大丈夫?」
焦った依未が私を心配する。彼女は私の名を縮めて"みらい"と呼ぶ。
「私は大丈夫だよ。依未は?ケガしてない?」
自分の無事をすぐさま伝え、私も彼女を気遣った。
「うん、平気。どこも痛くないし、血も出てない。ねえ、一体何が起こったの?突然の大爆発?みんな倒れてるよね?ナツノヨルの4人も動かない気がするし、心配……どうして私たちだけ無傷なの?」
明らかに動揺し、質問攻めをする依未。私ももちろんわけがわからなくて困惑していたが、少しでも落ち着こうと試みた。
「依未、落ち着いて。大変なことが起こっちゃったね。事故か何かかな?とにかく私たちは無事でよかった。運営スタッフさんを呼びに行った方がいいかもね。人が沢山倒れてるから、避けながら進むしかないけど」
「う、うん。人がハンパない。マジでヤバい光景だね……」
依未は下を見ながら、青ざめた様子でそう言った。
まさにその通りだ。"地獄絵図"とはこのことか、というレベルのひどい有り様である。
怖くて確認はしていないが、大量に出血していてかつ全然動かないことを考えると、もしかしたらかなりの人間が既に亡くなってしまっているのかもしれない。スマホで電話して警察を呼ぶことも頭をよぎったが、まずはスタッフにこの現状を知らせるのが先決だろうと思い直した。
「スタッフの人も、誰も来ないね。ホントどうなってるのかな……」
「フハハハハ!!」
「誰!?」
私が強い不安を口にしたその直後、舞台のステージの方から濁ったように低い、奇妙な笑い声が聞こえ、思わず反応してそちらを振り向いた。それはとても大きな声で、だいぶ離れている私たちにも十分聞き取れるほどの声量だった。
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