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数字パズル
16時45分。
サイマーフェス会場から車で20分ほどの距離にある埼玉県警察本部に到着し、私と依未は別々の部屋でそれぞれ事情を聴かれることとなった。
私の担当は塩見刑事で、まず初めに名前と年齢を伝えた。
「龍造寺桜みらいさんだね。失礼だけど、ずいぶん珍しい名前だね。20代女性で下の名前が5文字以上の方とは、初めてお会いしたなあ」
「は、はあ……」
塩見刑事は笑みを浮かべ、ふむふむと感心するように顎に手を当てた。私は名前のことを突っ込まれるのは慣れっこなので、苦笑いで返した。
珍しいのは確かだが、私自身は"桜みらい"という名を恥ずかしいとは思わない。名前をつけたのは父だ。父が桜が好きなことと、私が3月に生まれたこと、そして未来に羽ばたいてほしいという願いを込めて名付けてくれた。"みらい"のみひらがななのも、女の子のネーミングとしてはありがちで、字の見た目も可愛いからである。"キラキラネーム"で読めない当て字を使うより、シンプルでいいだろう、えっへん!
それにしても、下の名前が5文字以上の女性なんて、30代以降でもいないと思うのだが……。
その後、私は刑事の質問に一つ一つ答え、サイマーフェスに同行した山代依未の名前やナツノヨルの存在、そのナツノヨルの歌の途中で爆発が起きたことなどを、丁寧に説明した。
「ふーむ、なるほど。色々説明してくれてありがとう。ただ我々には一つ、大きな"疑問点"が残るのだよ。これだけ大規模な爆発が起きたにも関わらず、なぜ君たち2人だけが無傷で助かったのか____もちろん、まだ正確な死者数や負傷者数はわからないけど、我々が会場全体を見た限りでは、ケガすらしていないのは君たちだけだ。立っている姿が妙に目立ったから、我々は声をかけた。正直、"不自然"なんだよ。ひょっとして、君たちはこの事件について何か知ってるんじゃないか?」
そう言うと、塩見刑事は優しかった態度が一変して、険しい表情を見せた。
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