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え?何?
もしかして、私たちを疑ってる?
私がこの事件を企てたとでも言いたいわけ?
そりゃ確かに、自分たちだけがケガもしていないのは不自然と思われるのは理解できるけど、私も依未もなぜだかはわからないの。当の本人たちもびっくりしてるの。
そもそも大きな事件に巻き込まれただけでも十分被害者なのに、運よく助かったことが逆に疑われる原因になるなんて……理不尽にも程があるわ!
私は塩見刑事に疑惑をかけられたことに腹を立て、冷たい態度で受け答えした。
「私は何も知りません。普通にナツノヨルや他のバンドの歌と演奏を楽しみに、音楽フェスにやってきただけです。それで16時過ぎにいきなり爆発して、人が大量に死んでいて……無傷だったけど、私だって被害者なんです。怖くて、かなり精神的に傷ついているんですよ。一緒にいた依未はもっと怯えてたし。こんな大罪をしでかした、悪魔のような犯人に対しては憤りしかないです。自己中心的な犯行声明といい、場にそぐわない明るいアニメ曲といい、ふざけすぎだわ。それなのに……。助かったからって、他の見知らぬ観客を皆殺しにしたって言いたいんですか?いくらなんでも酷すぎませんか?」
私は怒りと悲しみで胸が締め付けられ、泣きそうになりながら刑事を睨んだ。気づけばはっきりとした口調で、全力で反論していた。
「龍造寺さん、落ち着いて。ごめん、言い方が悪かったね。君たちを疑ってるわけじゃないんだ。もし君たちが犯行に関わっているとしたら、自分たちだけを生き残らせるような手段は使わないと思うんだ。このように、すぐ警察に目をつけられるのが容易に予測できるからね。そうじゃなくて、君と山代さんの顔見知りや親しい友人で、君たちがサイマーフェスに行くことを事前に知っていた人はいないかな?その中の誰かが、意図的に"身内"のみを救った可能性も考えられる。もちろんこれさえも単なる推測で、証拠もなしに疑うことはできないんだけどね。頼む、参考として教えてもらえないかな?」
そう言われ、ハッとなった私は納得がいった。
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