動機

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動機

21時10分。 辺りが静まり返った関下みどり公園では、私と燕、突如現れたでっせの悪オヤジのみがおり、街灯はあるので顔は見えるものの、やはり夜はかなり暗かった。 私は趣味の読書とミステリー好きを活かし、あらゆる点から燕を追い詰め、苦戦はしたが最後にボロを出させ、奴自身に犯行を認めさせることに成功した。そもそも殺人事件に巻き込まれるなど、生まれて初めてで、推理を実際にした経験もなかったが、過去に得た知識が役に立ったようだ。 隣の駐車場には警察官が数人、身を隠している。だが燕が今罪を認めたにも関わらず、すぐに確保しにこなかった。私は本当に彼らがいるのかどうか、不安になった。 私が黙って燕を睨んでいると、奴が相変わらず笑いながら長々と語り始めた。 「順を追って説明しよう。俺がなぜこんな無差別大量殺人を計画したか、その動機は後で話す。まずはこのでっせの悪オヤジの正体からだ。こいつは実は、俺の愛犬の福スケの生まれ変わりなんだよ。福スケは7月下旬に、老衰で死んだんだ。俺は悲しみに暮れた。だがなぜか奴は、このオヤジに姿を変えた。俺もマジでびっくりしたよ。こんな"ファンタジー小説"に出てくるような、不思議な魔物がこの世に存在するなんてさ。なにせ浮遊や瞬間移動などの、特殊能力が備わってるんだぜ?で、奴が俺にこの計画を持ちかけ、前々から社会を恨んでいた俺は、オヤジと組んで犯罪史上例を見ない大量殺人を起こすことに決めた。特殊爆弾をオヤジが用意し、フェス会場のステージにそれを仕掛けた。そして俺が爆弾と連動している専用機を使って、時間と場所を入力し、遠隔操作で会場のみを一瞬で爆破させたんだ。その機械も、オヤジが出してくれたものさ。事前に君と山代さんだけを殺人のターゲットから外してくれと頼んだのは俺だけど、その特殊な仕掛けもオヤジがしてくれた。結局俺はボタンを押しただけで、それ以外の下準備は奴に任せっきりだったんだよ。犯行声明や主題歌を録音したテープも、奴に頼んで爆弾と同じ場所に仕掛けさせ、機械を使って時間差で流していたのさ。まあかなりの恐怖を伴う演出にはなったし、俺としては楽しめたけどな、フハハハハ!」
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