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奴は犯行声明と同じ不気味な笑い方をし、何ら恥じることなく、自分の犯罪を大っぴらにした。
「そんな…ペットの福スケが?死んで、このおじさんに……?信じられないわ。じゃあ特殊爆弾を用意したのも、犯行声明やフランダースの犬の主題歌を録音したテープを仕掛けたのも、私たちだけを爆発から回避させたのも、全部オヤジの力を借りて行ったってこと?結局"あんた"は計画や指示をしていただけで、自分の手はほとんど汚さずにこんな大それた犯罪をしでかしたのね?他力本願にも程があるわ!卑怯者!!
それに、本当にそういった超常現象を利用していたのだとしたら、トリックでも何でもないから、警察や探偵がどんなに努力したって解決できるわけがない。謎が多く残ったままだったのも頷けるわね」
私は燕に対しての怒りが爆発し、ついに代名詞があなたからあんたへと変わった。そして物体の力を借りてまで大量殺人をやらかした、想像を遥かに超えるこの男の性根の腐りように、怒りを通り越してもはや呆れ果てた。
「そうだな。だけど謎解きは自力で作成したし、ハンドルネームと爆弾の名前は俺自身が決めたんだ。理系が突出して得意でこだわりも強いから、マイナーな用語かつ名前のインパクトが大きいものにしようと思ってね。ケーララの赤い雨も、ズベン・エル・ゲヌビも、なかなか面白い名称で、俺は気に入っているんだよ」
奴は嬉しそうに、自分の理系の知識をひけらかした。理系が苦手な私には理解不能な価値観だが、奴が自分の世界に浸り込んで、現実を直視できていないことだけは悟った。
私は冷たく返事をし、さっさと動機を語らせるようにうまく誘導した。
「へえ、そうなんだ。それについてはわかったわ。じゃあそろそろ話してよ。あんたがなぜそんなに社会や人間を恨んでいるのか。この前代未聞の無差別大量殺人を起こさなければならないほど、過去に何があったっていうの!?」
私はまた怒り口調に戻り、悲しみを堪えきれず、ついに涙が流れた。
死者約1万2000人。
この莫大な人数が、昨日の夕方の爆発で一瞬で命を奪われたのだ。しかも犠牲者の9割が、20代以下の若者だという。
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