動機

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「ああ!特に酷かったのは中学だ。俺は元々大人しい性格で、集団で何かをするのが嫌いだ。あと動物や植物が好きで、人と関わるよりも、生き物の世話をしたり、コンピュータをいじったり、プラモデルを作ったり、そんなひとりで楽しむ趣味が多い。その辺が変わっていると思われたんだろうな、クラスの男女数人からイジメの標的にされた。最初はからかわれる程度だったが、日を追うごとにエスカレートしていった。授業が終われば、休み時間にバケツに入った冷たい水を頭からかけられ、教科書や体育着をカッターでズタズタに引き裂かれ、下校途中は通学路の人目につかない場所で、集団でボコボコに殴られた。女もお構いなしに、俺の頭を竹刀でぶっ叩くんだからな、恐ろしかったぜ。机には"死ね、キモメガネ"と、同じ落書きを赤いマジックで何個も書かれた。中1の秋頃にはクラス全員から無視され、誰一人味方なんていなかった。担任教師も、見て見ぬふりだったと思う。その頃にはもう、何のために学校に通うのか、何のために生きているのかもわからなくなっていたかな。遺書にいじめた奴らの名前を書いて、"報復"する目的での自殺も考えたが、こんなクズどものために死ぬのもアホらしいと思い、実行はしなかったさ。どうせ責任なんか取りゃしないだろうし。俺はなぜか不登校や転校という選択肢を取らずに、イジメに耐え続けたんだ。そして暴行を受けながら誓った。 必ずお前らに復讐してやる!!____と。 いじめた奴らを一人一人殺してやろうとも思った。だがいじめられている人間は世の中にたくさんいて、いじめ自殺は"社会問題"として度々ニュースにもなる。つまりこの社会に蔓延する"闇"が、イジメという犯罪に匹敵する行為を生み出していると、いつしか考えるようになった。それから復讐の対象が、一部の同級生から社会全体へと一気に(ふく)らみ、自分を苦しめた同世代の若者を皆殺しにしてやりたいという欲求に変わり、今回の大規模爆破を計画するに至ったんだ」
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